「こんな逃げるはずじゃない…」逃げに乗ってしまい、総合でも13位と良いポジションに付けた橋川でしたが、翌第4ステージ(225km)ではスタート直後の約20kmの登りで千切れ、その後約200kmをグルペット集団で走り、先頭集団から25分遅れで完走。
その晩、ちょっと寒気がしたのだが、あまり気にしないようにする。
そして翌朝、まだ身体がだるかったのでレースドクターの所に直行。昨晩よりはかなり良くなっていたのだが、一応診断を受けた。体温は37.0度。風邪の兆候は見られないので軽い熱射病では無いかとの診断で、レースは続行する事にする。
第5ステージも中盤の登りで遅れ、グルペット集団でゴール。前日のメンバーと50%くらいは同じだったので、なんとなく「連帯感」のようなものを感じてしまう。あ〜嫌だ嫌だ…。千切れ集団で連帯感なんて!
そして最終日は122kmのフラット。リーダーのマルコポーロの中国人に4秒差にホセイン(イラクジャイアント)がつけているので、最後の総攻撃をジャイアントが仕掛けるか!と思ったが、淡々と進むマルコポーロに誰も攻撃をしかけるやつはいない。「なんか、面白くねぇなー」と思い始めた40km過ぎ、今回ボンシャンスのメンバーで参加している石田 哲也選手が「橋川さん、行きません?」と声をかけてくる。‘なかなか分かっている奴だ’と思いつつ、「そうだねぇ、行こうかな…」と曖昧に返事をすると「じゃ、橋川さん、まだですよ、ちょっと待って下さい」といいながらスタンディングを始めするするっと、そのままダッシュしてアタックして行ってしまった!「おい、おい、まだですよ、ちょっと待っててくれと言ったのはお前だろ!」このまま、石田一人を行かせてしまうのは、特攻隊に所属する同志に「お前先に行け!」と行かせて自分は後方に待機しているような感じでどうも居心地が悪い。‘石田待ってろよ!俺もすぐお前を追いかけていくぜ!」などと考えつつアンテナを張り巡らせていると、ドイツ人が行きたそうなオーラを放っている。そいつをマークしていくと…やっぱり行った!ドイツ人にツキイチとなり、石田選手に一気に追いつき、3人でローテーションを始めた。
ドイツ人も、ボンシャンスも、マトリックスも総合に絡んでいる選手は誰もいないから、最後くらいいかせてくれるかな…と淡い期待も虚しく、ほんの10kmもしないうちに吸収されてしまった。
ラスト、10km、ジャイアントのデビッド マッキャンがアタック。これを機に集団も最後のゴールに向けて活性化してくる。ラスト5km、ゴール勝負は「あまり狙っていないけれど、行けたら行こう…」と中途半端な気持ちで走っていた俺は、集団の前方にいた。そこへ長野がやってきたので、俺が長野の後ろにつき、ラインを読みながら「右のドイツ人の後ろに回れ」とか、「もうちょっと待て」とか、喧しく怒鳴り散らしていたが長野はしっかりと指示通り狙ったラインを進んでくれた。第2ステージでもそうだったが、集団スプリントで前を走る力はあるんだよね。ただ、ラインを読めないだけで。
俺は最後はまた集団に飲み込まれ、不発に終わったが、同じく向川+三浦さんのラインは向川が最後に思い切って先行し、三浦さんが8位に入賞した。

今回のレースはチームにとって初めての参戦となる。これまでも同じレースを違うチームで走ってはいたが、各々の選手がどういう戦略を練って、どういう走り方をするのかは全く分からなかった。それが今回、体調的には全く準備が出来ていなかったが、チームメイトの特徴や戦略、走り方を少しでも見て、実戦で行動できたのは大きな収穫だった。