ベッカムカプセルはドーピングか?

僕もオアシスをコンディショニングや疲労回復なんかで使うことがある。効果は?と問われれば、「絶対に効果はある。」と思っている。僕の身体には…じゃ、コレがドーピングに当たるかどうかに関して言えば、規則上シロであるなら、シロなんだろうけれど、JADAでは何を根拠にドーピングに当たる可能性があるなんて言ったのだろう?確かに故意に酸素摂取量を高める行為はクロになる可能性がある。今後、高地トレーニングも「クロ」になる可能性だってある。しかし、オアシスの場合カプセルに入っている間だけ、酸素摂取量は増えているかもしれないけれど、出てしまったらタダの人なのである。スッキリはしているかもしれないけれど。さらに複雑なのは競技団体によって禁止薬物が異なっている点。例えばオリンピックとツールドフランスでは禁止されている薬物が異なっていると思った。裏を返せば使える薬もあるってことだよね。じゃ、何がシロで何がクロかは結局、ルールブックに載っている事を選手は忠実に守るしか無い。自己防御である。そして、先ずは自転車ファンの皆にもドーピングが何であるか?を知る必要があると思う。例えばある選手が薬物を使用して黒になった。裁判で証言して、涙を流しながら「僕は騙された。無実なんです」と訴えて、減刑された選手を「やっぱりあの選手はシロだったんだ」なんて馬鹿げた考えは捨てて欲しい。クロの選手はクロである。そして、日本でも過去に一流とされている自転車選手が何名かクロになっている事実もある(現在、現役のロード選手では僕は知らない=いないと思う)。

僕はドーピングは嫌いだ。僕自身、薬物を使用したことはある。但し、ビタミン剤やアミノ酸等を筋肉注射で行っていた。今の規則ならばクロに当たる行為だけど、10年以上も前は、その行為は認められていたのだ。そして、ビタミン剤なんかをせっせと取りながら、禁止薬物をせっせと取っている選手と競争しなくてはならないのだ。そしてそんな選手達に対して「いつか天罰が下れば良いのだ!」と考えた事だってある。

ベルギーのアマチュアチームで一緒に走っていた選手はプロに転向後、興奮剤をレースで常用しているうちに、日常生活でも薬物依存症になり、引退後、ウチの近所のカフェで機関銃を乱射し、奥さんと子供をベルギーに残したまま、タイに逃亡。逃亡生活に疲れ10年後にベルギーに戻ってきたところを逮捕された。また、一緒にアマチュアレースを走り、同じ年にプロに転向した「ライバル」も薬物依存症になり、専門の病院で入退院を繰り返しながら治療を受けていたが、数年前に病院で首を吊って亡くなった。

今、僕自身は薬を使っている選手に対して何とも思わない。その選手が成績や名声やお金を求めて、行うドーピングは「自己責任におけるリスク」を負ったものであって、良いとか、悪いとか、そんな単純な問題ではないと思っているから。だけど、やはり、コレから世界を目指す若い選手が「薬を使わなければツールドフランスに走れないの?」と夢も希望も無くなってしまってはいけない。だから、ドーピングは無くならなければならないと思う。

1996年、僕のベルギーのアパートに、当時モトローラに所属していたG.フレイザーと言うカナダ人が数ヶ月僕のところに居候していた。彼は筋肉注射のビタミン剤も、もちろんドーピングも行っていなかった。その彼が、モトローラとの契約を失い、フランスの小さなチームに移籍後、ドウフィネ リブレでF.モンカッサンや、E.ツァベル達をスプリントで破り優勝した。さらに、その年のツールドフランスの第一ステージ、スプリントで区間8位。14日間でリタイヤとなってしまったけれど、彼は当時の僕にとって「ドーピングをしなくてもココまでいける!」と言う希望だった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081226-00000031-san-soci