大塚 航とういう青年

8月にニュージランド選手のサポートでレース会場に行ったら、そこに日本人がいた。大塚 航。24歳。ベルギーの首都、ブリュッセルでマンスリーマンションを借り、電車で最寄りの駅まで輪行。駅からは自走で来たそうだ。すべて自費で遠征し、自分でレース会場を調べ、駅の場所を調べ、電車の乗継を調べ全てにおいて自己完結しているしっかり者だ。その日、彼に「大きなレースがあるから一緒に走る?」と誘ったら、「ちょうどその時期はもう日本に帰らなくてはいけないので…」と残念ながらそのレースに走る事はできなかった。しかし、「まだやり足りないので、日本に帰ってからまた(ベルギーに)戻ってきます」と言う。

その大塚青年がベルギーに来て1カ月が経った。それまでのベストリザルトは20番台。はっきり言って大したことはない。しかし、8月に彼のレースを見たとき、かなり悪いポジションで走りながらも、ひたすら耐えていた。ジアシはあるのだと思った。9月にベルギーに戻ってからはアタックするタイミング、ポジションの位置取り、トレーニングに関する事等をアドバイス。と言うと偉そうだけど、たいていの日本人がベルギーに来てぶつかる壁は同じ所なのだ。まずは前半の1時間が勝負である事…トレーニングはスピードトレーニングを中心に、イメージ的には個人追い抜きのタイムを伸ばすようなトレーニングをする事等々、ユーラシアの選手に言ってきたことと同じ事を伝える。

大塚青年は今でも普通に1kmを12秒台で走れる(高校の時はトラックの短距離を中心に活動していたらしい)スピードがあり、9月にベルギーに来てからはたったの数週間で見違えるように成績が伸びた。力を付けたのではなく、元からあった力を引き出せるように「少しだけ」コツを掴んだのだろう。と言っても一番良い時で16位かな…ある時は8人のエスケープグループに乗り、コースを間違えて順位を落とし、ある時は7人のエスケープグループでパンク。これらのアクシデントが無ければ確実にトップ10に入れたと言い切れる走りだっただけにとても残念だった。

大丈夫。これだけ走れれば、トップ10は時間の問題だ…と言ってきたが、それも残すところあと1レースでベルギー遠征が終わる。この一カ月で大きな成長を遂げたと思う。自信を持って、最後のレースに臨み、そして日本のレースでも頑張って欲しい。